2021/01/05 16:55

【アールヌーボーの概要】


アールヌーボーとは、19世紀末から20世紀初めにヨーロッパを中心に流行した芸術様式のことです。
フランス語の Art (芸術)+Nouveau(新しい)で 新しい芸術 を表します。

様々な特徴があるので1つずつ紹介していきたいと思います!


◎デザイン


主な特徴は、曲線的でエレガントなデザイン。

素材としては、アールヌーボーが誕生した当時に新しいとされていた鉄が多く使われていました。

他にもガラス、宝石というような異素材を組み合わせたりすることも特徴です。

鉄と聞いてパッと浮かばない人も多いのではないのでしょうか?

当初は鉄を線材として用いることで、自由かつ軽やかな曲線の繊細なデザイン表現も可能となったのです。

様々な表現方法があって非常に興味深いものが多いですね。


◎モチーフ


草木の枝や葉、花といった植物を中心とした有機的な自然をモチーフとすることが多いです。

他にも昆虫や動物といった自然にあるモチーフが用いられることもありました。

これらのモチーフは壁に描かれたり、木製家具の形態として取り入れられていました。

このようなものは具体的に表現するというよりかは、
抽象的に簡略化して描くことで自由に自然を想起できるようにデザインしています。


◎歴史的背景


19世紀初頭の頃に起こった産業革命によって安価で粗悪な大量生産品が多く出回り、
その反動から多くの人々は芸術性や独自性が高いものを求めるようになりました。

しかし、希少かつ高価なものが多いためこの風潮は長く続かず、短期間で終わってしまいました。

アールヌーボーは一つの分野に特化しているというよりかは、多岐にわたる展開があります。

例として工芸品や建築、絵画、ポスターなどのグラフィックデザイン、他にもジュエリー、家具、室内装飾、ステンドグラスなどが挙げられます。
令和になった今でも人気は根強く、上記写真のようなアールヌーボー様式でランプを個人制作したりされているのも多く見受けられます。


【アールヌーボーの代表的な作家・作品】

次にアールヌーボーを利用している代表的な作家・作品を幾つか紹介していきたいと思います。


アルフォンス・ミュシャ

ミュシャはアールヌーボーの代表的な画家です。
当時は多くの商業用のポスターや、装飾パネルなどを制作する世間に大人気の画家でした。
彼のポスターは芸術性が高いと評価され、「ポスターの黄金時代」を築いた人物と言われ大量にポスターを印刷していました。

また彼が作品によく利用した技法は「リトグラフ」技法というものです。
この技法を簡単に説明すると、石版の表面を削るのではなく、水と油の反発を利用して絵を描いて刷る技法ということです。
この技法を用いることで版の痛みを軽減させることが可能になり、大量に刷ることができるというメリットがあります。

ここで彼の代表作を幾つか紹介したいと思います。

・『ジスモンダ 』

この作品は舞台公演用の広告ポスターとして描かれたものです。
ミュシャが名声と社会的地位を得るきっかけとなった伝説的ポスター作品と言われています。
遠くからでも目に付くため、まちの人々や広告主など多くの方々から人気がありました。
重厚で伝統的な雰囲気を感じさせるような絵画として『ジスモンダ』は完成しました。


・『黄道十二宮 』
この作品はカレンダーの意匠が基となったものです。
アールヌーボーの特徴でもある曲線を多用しており、また植物をモチーフに描かれています。
完成度が高く、当時はもちろん、今の時代でもカレンダーに使用されています。
カレンダー以外にもポスター、装飾パネルなど様々な展開で用いられていたということも分かっています。


・『スラヴ叙事詩

この作品はミュシャが16年の歳月をかけて描き上げた20作の連作です。
チェコ出身であるミュシャは、チェコを含むスラヴ民族の偉大な歴史を壁画として表し、それによりチェコ国民の民族意識を発揚し、独立への意欲を高めようと考えこの作品を描いたと言われています。
絵画的観点で見ると、歴史の創始を予感させるような星が輝く夜と始まりの光を幻想感溢れるような描写で描かれています。
この作品も非常に完成度が高い作品として評価されています。



◎エミール・ガレ

ガレはアールヌーボーの代表的なガラス工芸家です。
彼は浮世絵などの日本美術に出会ってから、多くの表現方法などを積極的に取り入れ、独自の表現を確立させました。
彼自身海への関心が高まり海を生命の象徴と捉えて、海洋生物の姿を新しい芸術のモチーフとして作品に取り入れていたと言われています。
植物や昆虫のデザインを主に用いており、また古来のガラス技法であるマルケトリーを用いつつ流動感や色彩は非常に洗練されていました。
1878年のパリ万国博覧会では、月光色と呼ばれる淡い青色のガラスを出品し、高い評価を得たという話もあります。

◎ガウディ

ガウディはアールヌーボーの代表的な建築家です。
彼は「美しい形は構造的に安定している。構造は自然から学ぶべきである。」という風に考え、建築するもののほとんどに自然からのヒントを取り入れています。
また、設計図を描かないで建築するということもあり注目されている建築家です。


ここでも彼の作品を幾つか紹介したいと思います。

・『サグラダファミリア』

サクラダファミリアはスペインのバルセロナに位置する文化遺産に登録されている建物です。
現在は未完成状態となっており、2026年に完成すると言われています。
完成図はガウディの頭の中にしかなく、たった一枚のスケッチブックと弟子による資料しか情報がない状態だったため、
完成まで長い時間がかかったようです。
ガウディは光の入り方に対して非常に力を入れていたため、内部の美しいステンドグラスがアールヌーボーの大きな魅力のひとつとして、その存在を示しております。


・『カサ・バトリョ』

カサ・バトリョは1984年にユネスコの世界文化遺産に登録されてました。
この建物全体は「海」をテーマとして作ったと言われており、表面に青っぽい色を使うなどして表されています。
この青は、青を基調とした粉砕タイルのモザイクであるトレンカディスに加え、ガラスの破片を大量に使っています。
このような技法を用いることでサンゴ礁のキラキラとした海を表現することが可能なのです。
また、大きな窓の姿から「あくびの家」、人によっては窓に並ぶ石柱の独特の形から「骨の家」などとも揶揄されることが多いです。


・『カサ・ミラ』

カサ・ミラは1984年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
特徴として直線的な部分を全く持たないといった構造になっており、柔らかい印象を与えてくれます。
浪打ちのように描かれた天井の壁はまるで自分が海底にいるかのような気分に誘われます。
外観の波打つ曲線は地中海をイメージして作られたようです。

バルコニーは『鉄』を用いることで波に漂う海藻をイメージし柔らかさを出しています。
アールヌーボーは鉄が多く使われてたという話を冒頭で行いましたが、まさにこの時期鉄を有効的に活用していたことがこの作品からわかります。


【まとめ】

今回はアールヌーボーの様式についてご紹介させていただきました。
昔ながらのデザインという印象だと思いますが、今見ても非常に心惹かれる雰囲気ですよね。
気になった方は是非、西欧館のアールヌーボーの芸術作品をご覧ください。

https://seiokan.official.ec/